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導入事例 7 min read

採用のためのホームページから、社内IT を引き受けるまで

大田区久が原で電気工事と家電販売をされている有限会社たかはし電器で、ウェブサイトの制作から販売管理システムの導入、業務用パソコンの入れ替えまでを担当しました。一件ずつ依頼をいただいた結果、支援の範囲が広がっていった事例です。

Livspect の松井です。

「採用を進めたいので、ホームページを作りたい」

こんな相談をもらったのが、2026年5月でした。東京都大田区久が原で電気工事と家電販売をされている、有限会社たかはし電器さんです。社内にシステムを見る人はいません。

そこから 8 月までの 4 か月で、ウェブサイト、販売管理システム、業務用パソコン、Microsoft 365 と、社内IT をひととおり引き受けることになりました。最初からそういう話だったわけではありません。一件ずつ相談をもらった結果です。

何をどう決めたのか、順に書きます。掲載の許可はいただいています。

有限会社たかはし電器の店舗外観

採用のためのホームページから

きっかけは採用でした。人を採りたいけれど会社のことが外から分からないので、まずはホームページを作りたいとのことでした。

制作会社に見積もりを出したものの金額が合わなかったとのことで、ご相談をいただきました。

当初は予算の問題だと思っていたのですが、そうではありませんでした。そもそもホームページが必要なかったのです。地元に根付いていて、仕事はそれで回っていましたし、無くて困ったこともこれまで一度もなかったそうです。

ただ、採用となると話が変わります。取引先には知られていても、働き先を探している人からは見えないので、会社を調べようとしても何も出てきません。仕事は取れるのに人は採れない、という状態でした。

同じように見積書を出しても仕方がないので、こちらは実際に動くものを作ってお見せしました。文言も写真も仮のままですが、完成したときにどうなるかは見れば分かります。それで進めましょう、という話になりました。

事務所で出た、販売管理の相談

サイトは Astro と EmDash で作りました。現在は taka-den.net で公開しています。

文言も施工事例も、管理画面から社内で編集できます。文字を一つ直すために制作会社へ依頼する必要はありません。検索対策もひととおり済ませました。構造化データ、サイトマップ、OGP に加えて、生成 AI 向けの llms.txt も置いています。

ここまでは、当初の依頼の範囲です。

ただ 5 月に、相談があるので来てほしいと言われて事務所へ伺ったとき、販売管理についても話が出ました。

弥生販売を使われていました。よくできたソフトですが、電気工事の業務がそのままは入りません。汎用の販売管理ソフトはどの業種でも使えるように作ってあるので、業種に固有の項目は自然と抜けてしまいます。

見積そのものは問題なく作れますが、設置した機器の型番や設置日を入れる場所がありません。どうされているのか伺うと、備考欄に書いている、とのことでした。

ソフトで足りない部分を、運用で完全に埋めている状態です。 業務としては問題なく回っていて、誰も困っていません。ただ、後から探すには向きません。

サイトを直しても、この状態は変わりません。

電工販管.COM ができるまで

業務を一から全部ヒアリングする方法もありましたが、先にいま使われている弥生販売を一通り見せてもらいました。

これが結果的に一番早い道でした。既存のソフトを見ると、何をどの順番で処理しているか、どこを備考欄で補っているかまで、業務の形がほぼ読み取れます。業務の設計図として、いま動いているものほど正確なものはありません。

そのうえで、足りないものを伺いました。何に困っているかではなく、本当は何ができたらいいかを、制約を外して挙げてもらったところ、こういうものが出てきました。

  • 設置した機器の型番と設置日を残したい
  • 経過年数を見て、点検や買替の案内を出したい
  • 原価を工事の単位で見たい
  • 現場からの報告を、その場で入れたい

これがそのまま、機能一覧になりました。

それは受託開発では、と思われるかもしれません。作り方そのものは受託とほとんど同じで、違うのはその会社のためだけに作らなかった点です。

設置履歴から点検を案内する商習慣は、たかはし電器さんだけのものではなく、電気工事業ならどこでもやっていることです。一社の業務を深く聞くと、その業種に共通する部分が見えてきます。

そこで、業種向けのソフトウェアとして作りました。電工販管.COM は、電気工事会社向けの販売管理システムです。導入費用と月額でお使いいただく形になります。同じ内容をゼロから受託で作れば、数百万円かかる規模になります。

サイトを 6 月に納品し、そこから 2 か月弱で販売管理システムを作りました。業務を最初から全部ヒアリングして設計していたら、何倍も時間がかかったはずです。既存のソフトから業務の形を読み取り、そこからの差分だけを聞いたので、この期間で収まりました。8 月の導入では、2 週間のうちに 3 回事務所へ伺っています。

いちばん手をかけたのはデータの移行でした。移行元は弥生販売のバックアップデータです。

長く使われてきたデータには、表記の揺れや担当者ごとの入力ルールが必ず残ります。同じ取引先が 2 通りの書き方で入っていたり、備考欄の書式が途中から変わっていたりして、ここを機械的に処理できないのが乗り換えの一番の壁になります。

整えたうえで移し、過去の取引も設置履歴も、そのまま引き継げています。

使ってみて出てきた要望は、訪問のたびに反映しました。

やりたいことは全部できた、という言葉をいただきました。

完成品と同じ価格帯で組んだパソコン2台

システムを入れた流れで、事務所のパソコンについても相談をいただきました。動作が重く、業務に支障が出ていました。

まず法人向けの完成品を調べています。Dell Pro マイクロデスクトップが、Core i5 とメモリ 16GB、SSD 256GB、Windows 11 Pro に Office を付けた構成で 145,800 円でした。

組み上げた業務用パソコンの内部

同じ価格帯で、用途に合わせて 2 台組みました。完成品と変えた点が 3 つあります。

一つめは、起動用とデータ用でドライブを分けたことです。完成品は 1 本が普通ですが、分けておけば OS に問題が起きて入れ直すことになっても、業務のデータは別のドライブに残ります。

二つめは、Windows をリテール版にしたことです。メーカー製に付属するライセンスは本体に紐づきますが、リテール版なら本体が故障したときに別の筐体へ移せます。

三つめは、後から増設できる構成にしたことです。メモリもストレージも足せるので、業務が増えても本体ごと買い替える必要はありません。

どれも、完成品を買わずに構成から決めて組んだからできることです。既製品では、ドライブの構成もライセンスの種類も、あとから何を足せるかも選べません。

そして同じ金額に、旧環境からのデータ移行、プリンタの設定、業務システムへの接続まで含めています。組み上げと設定は、販売管理システムの導入と同じ 8 月の訪問で進めました。完成品を買った場合、届いた箱を業務で使える状態にするところは自分たちの仕事になります。

保証は 1 年間お付けしました。電工販管.COM をご契約いただいている間は、その後の増設や部品の交換もこちらで対応します。

人が増える前提のアカウント設計

あわせて Microsoft 365 を導入しました。

Google Workspace ではなく Microsoft 365 にした理由は単純で、Excel を使いたいとご相談を受けたからです。

Web 版だけで足りるならもっと安いプランもありますが、それではこれまで作ってきたファイルが扱いにくくなります。デスクトップのアプリが使えるプランを選びました。

プランは Business Standard で、Teams を含まないものにしています。使わないものに毎月払う必要はありません。

メールも移行しました。それまでは Hotmail のアドレスをお使いでした。採用のためにホームページを作る、という最初のご相談を踏まえると、ここは変えておくべきところです。会社のドメインでメールを受け取れる形にしました。

パソコンのログインも、このアカウントに統一しています。

これは採用を見据えた判断です。最初の相談が人を採りたいという話だったので、増えたときに破綻しない形にしておく必要がありました。人が増えるたびにパソコンごとの設定を触るのは現実的ではありません。アカウントを作れば済む形にしてあります。人が抜けたときも、アカウントを止めればパソコンごと使えなくなります。

基幹システムを組むほどのことはしていません。基準にしたのは、データを失わないことと、人が増えても運用が破綻しないことの 2 点だけです。

情シスのいない会社の社内IT

5 月から 8 月までにやったことは、こうなります。

  • ウェブサイトの制作
  • 電気工事向け販売管理システムの導入
  • 業務用パソコン 2 台の構築とデータ移行
  • Microsoft 365 の導入、メール移行、アカウント設計

手作業が消えたというより、できることが増えた、という方が近い状態です。

振り返ると、特別なことはしていません。制作会社に頼めば高くつくサイトを社内で編集できる形にし、受託なら数百万円かかる販売管理を業種向けの製品として入れ、完成品と同じ金額でパソコンを使える状態にして納めました。どれも、同じことをより安く済ませる方法を選んだ結果です。 DX と呼ばれるものの多くは、この積み重ねだと思っています。

同じことは他社でもできるはずですが、サイトもシステムもパソコンもアカウントも一人で見られる相手を探すのが難しいのだと思います。担当が分かれていると、そのつなぎ目で毎回止まってしまいます。

社内にシステムを見る人がいない会社は、困っていないわけではありません。必要になったときに、どこにいくらで頼めばいいのかが分からないだけです。そういう状態でしたら、現状を伺うところからご相談ください。